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『ペットががんになった時』 (鷲巣月美編 三省堂)
ももの初診のときに、現在、猫のリンパ腫は決して珍しい病気ではないと主治医の先生がおっしゃいました。飼い主の経験としても、20年前と現在とでは猫の病気の傾向が相当、異なってきているようにも感じます。
現在、ネットによっておよその情報は入手することができますが、ペットの猫(あるいは犬)が診断された疾患とその治療方法について、まず包括的に全体を把握したい、そんなときに役立つ一冊であるように思います。この分野における第一線の獣医師・研究者の先生方が執筆を担当しています。
●はじめに
動物医療の進歩や動物とともに暮らす人々の意識の向上により、動物の寿命はひと昔前に比べ随分と延びました。一緒に暮らせる時間が長くなったことは喜ばしいことなのですが、寿命の延びとともに、人と同様にがんになる動物が増加し、今や犬・猫の死亡原因のトップとなっています。2000頭の犬の死後解剖を行った結果、全体の23%、10歳以上の犬では45%が腫瘍のために死亡したとの報告があります。
本書は犬と猫のがんについて書かれていますが、よりよい動物医療を受けるためには、がんに限らず普段から、動物と家族にとって「よい獣医さん」を探しておいていただきたいと思います。「おかしいな」と思ったときに、いつでも診察してもらえる、そして信頼できる「かかりつけの動物病院または獣医師」を確保してください。信頼できる病院探しは動物が病気になってからではなく、健康なうちに始めましょう。健康診断や予防接種などで動物病院に行ったときに、獣医師の対応や病院の雰囲気など、自分と動物にとって安心できる環境、信頼できる病院かどうか調べてください。
●質問したときに、きちんと答えてくれる、わかるように説明してくれる
●家族の意見を聞いてくれる
●自分の意見を押しつけない
●家族に責任を押しつけない
●一緒に考えてくれる
などは大切なポイントです。自分と動物に合った病院は、相性もあり各自異なると思います。90%の人が「素晴らしい病院だ。名医だ」と言っても、残り10%の人は「自分とは考え方が違っている」と言うこともあります。動物とともに暮らす人は、動物から「命を含めた委任状」を預かっているのです。大切な動物のために、納得できる病院、獣医師選びをしてください。
現在、動物のがんに関しては、人のようにがんの種類や臨床ステージによって詳細な治療方法が確立されているわけではありません。本書ではもっともスタンダードな治療法である、外科手術、抗がん剤治療、放射線治療、さらにクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)の維持向上に役立つ治療についてもいくつか紹介しました。最終的にどのような治療を受けさせるかは家族の判断に任されるわけですが、主治医とよく話し合って結論を出してください。いちばん大切なのは家族として、自分たちはどうしたいか、どこまでの治療を望むのか、ということを明確にしておくことです。
本書は犬、猫のがんとその治療法だけでなく、末期がんの動物との生活、ターミナルケア、安楽死、看取りとその後、さらにがんと闘った動物とその家族の闘病記から成り、犬と猫のがんに関して、家族の方々が「知りたい」と思っていることに答えるかたちで構成されています。質問形式にしにくい部分は解説形式やコラムとしてまとめました。
各章の筆者には現在臨床の最前線で、動物のがん治療に携わっている獣医師があたっております。本書が、闘病中の動物と暮らす家族はもとより、動物を家族にもつすべての方のお役に立つことを願っています
『ペットががんになった時』 (鷲巣月美 編 三省堂)より、「はじめに」を引用しました (※ご参考)
ペットががんになった時―診断・治療から看取りまで 鷲巣 月美 (2005/09) 三省堂 この商品の詳細を見る |
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